12:地震動の破壊力
地震と建築 大崎順彦 著 岩波新書 発行 抜粋

最大加速度が大きければ地震動は強い。だから最大加速度が大きい地震動は破壊力が強く、大きい震害を引き起こす。これは確かに事実である。しかし、最大加速度の大小だけが、破壊力を決定する唯一の要因かというと、そうではない。しかし、要するに破壊力は力であり、力学の原則によれば、「加速度は力なり」なのだから、加速度イコール破壊力と言った三段論法が成り立つ、そう言ったニュートン力学への信仰から地震動の加速度が震害の大小を決定すると言う考え方は、実は専門家の間でさえ、比較的最近まで支配的であった。最大加速度より速度の最大値の方がより実行的であり、実際の被害との対応を、より良く説明できるのではないかと言う考え方は、実はかなり前からあった。力学の理論によると、物を壊す原動力として地動がもっているエネルギーの大小は、加速度よりも速度の大小に依存していると言うことである。したがって現在、地震動の速度を重視し、耐震設計も加速度より速度に基づいたものとするほうが、より合理的ではないかという考え方が改めて台頭してきている。





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