14:力の尺度をめぐる論争

重力と力学的世界 古典としての古典力学 山本義信 著  現代数学者 抜粋
古典力学の形成 ニュートンからラグランジュへ 山本義信 著  日本評論社 抜粋 

運動量をmvとして導入したのはデカルトであつたそして、そしてデカルトは、この量が不変に保たれること、したがって「力の尺度」としてこの量をとる事を主張した。他方でライプニッツは「力の尺度」と考えら保存されるべきものは「活力」つまりmv2であると主張する。(今で言う運動エネルギーである。mv2は後にコリオリが1/2を乗じた。)この両派の論争はニュートン力学受容後も学会を二分した大論争であつた。大まかに見ると、イギリス、フランスはデカルト説に組し、ドイツ、オランダはライプニッツ説に組した。この論争にあっさりとケリをつけたのは、ダランベールである。ダランベールは運動方程式を直接時間で積分すればmvであり、空間で積分すれば、あるいは両辺にvをかけて積分すれば1/2・mv2が得られるとした。つまり「力積」が運動量の変化等しく、「仕事」が「運動エネルギーの変化に等しいことを表現している。対立はつまるところ「力」の尺度として「力積」をとるか「仕事」をとるかの差でしか無い様に思われる。「力の大きさ」と言うときに、連続的に作用している力の「瞬間値」を指しているのか、それともある有限時間の「積算置」つまり現在の力学用語の「力積」ないし「仕事」を指しているのか、この点に混乱があったと言う事がある。「Eulerは静止状態にある物体が一定の力で運動させられたならば、物体の質量に速さを掛けた物は力に時間をかけたものに比例し、質量に速さの2乗をかけたものには力に通過した道程をかけたものに比例する。前者は運動量、後者は活力と呼ばれる。」(現代流に言えば運動量=力x時間(力積、運動エネルギー=力x距離と等置される事である。)





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