16.層内並列バネ・層内直列バネ・各層直列バネ・各層並列バネ
直列バネは弱いバネと強いバネを1列に並べて両端を引張った場合に弱いバネと強いバネに生じる力は同じだが、弱いバネが強いバネより大きく変形することで、釣り合いを保つ状態の事である。並列バネは弱いバネと強いバネを並列に並べて両端を引張った場合に2つのバネの変形は同じであるが弱いバネと強いバネが強さ(剛性)の比で釣り合いを保つ現象である。つまり、直列バネは変形で、並列バネは力で釣り合いを保つと言うことである。住宅に用いる合板、筋かい等の構面材は各々耐力の強さの指標である、壁倍率をもって各階に配置されている。建物が地震、風等により横力を受けた場合に上階の床面の水平耐力が大きければ(剛床仮定成立)各々の構面材は同じ変形を受ける状態になり、各々の構面材、すなはち、合板、筋かい等は自身のもつ耐力に応じて力を負担する事になる。変形一定で力が自由、これは層内並列バネの原理である。しかし、上階の床面の水平耐力が小さく(剛床仮定不成立)の場合と構面材の平面的な配置のバランスがよくない場合は各列がバラバラになったり、片側の構面のみが大きく変形したりする。この現象は並列バネの原理から層内直列バネの原理に移行していることになる。木造の計算では偏芯率の規制でその危険性に配慮している。では、各層の関係、つまり1階と2階の関係はどうか。重力の作用する、鉛直力に対しては「直列バネ」の原理が働く為にある層の柱の耐力不足は直ちに建物の致命的大破壊になる。2階の床位置と屋根の軒桁位置に加わる水平力に対しても地震の場合は各層の重さ(質量)風の場合は各層の負担する壁の面積により、一定力です。その場合に柱の細い最近の在来構造は各層に生じる水平方向の変形は自由である。力が一定で変形が自由、これは各層直列バネの原理である。木造建物の各階の損傷集中は大黒柱,通し柱で防ぐ事が出来る。力が一定で変形が自由の直列バネの原理で生じる変形集中は昔の知恵で防ぐ事が可能である。伝統木造で用いる大黒柱、太い通し柱は各階の変形を一定にする役目を果たす。つまり、変形でバランスを取る各層直列バネの原理から力でバランスをとる各層並列バネの原理にすることで各階のもつ面材の剛性に応じた、エネルギー消散を効率よく全て働かせる事が出来る。但し、在来軸組みで使用される細く、しかも、梁ホゾで欠損の多いものは変形を上下に分配する前に水平力で折れたり、抜けたりするので、この点の解決が必要である。
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