22.建築・土木学会提言
海溝型巨大地震による長周期地震動と土木・建築構造物の耐震性向上に関する共同提言
2006年11月20日 社団法人 日本建築学会 社団法人 土木学会
抜粋
建物・構造物の耐震設計は巨大地震のひとつである1923年の関東地震直後に震度法として始まった。震度法は強度設計であり、基本的には現在まで脈々として踏襲されている。しかし、度重なる震害経験、地震応答解析技術の進歩によって、地震動の構造物への荷重効果として、力のみならず変形が重要であることが明らかとなった。力と変形の積はエネルギ−であり、地震の荷重効果はエネルギ−であると云える。地震がもたらすエネルギ−を吸収するために変形のなかでも塑性変形が重要である。塑性変形は、最大塑性変形、累積塑性変形、残留変形としてとらえられる。塑性変形が増大することは構造物の損傷度が深まることと同義である。
現行の耐震設計は想定した設計地震動の下で構造物の損傷を許容限度内に納めるものである。耐震構造の発展型として、重力を支える構造主要部分の損傷を極力抑え、付加的に設置されたエネルギ−吸収機構で地震エネルギ−を吸収させる免震構造、制震構造が普及しつつある。
最新技術を駆使して予測される想定地震動を用いて既存構造物の耐震性を検討することは極めて重要である。短周期地震動に関しては1995年の兵庫県南部地震が貴重な経験となった。短周期域の地震入力は場所によっては現行の設計地震入力の2倍を超えていた。しかし、現行の耐震設計法に従って設計された建築物は概ね致命的な損傷を免れた。
免震・制震構造の活用
既設構造物は旧基準で設計されており、現在の基準に規定する耐震性能を確保することが困難な場合が多い。従って耐震補強にあたっては耐力の増強のみを考慮するのでは無く、
免震、制震の考え方も取り入れるべきである。但し、免震、制振の効果は構造物が位置している個所の地盤特性や地震動の性状に大きく影響されるため、地震動のばらつきを考慮して、地盤を含めた構造物の動的解析によりその効果を確認する必要がある。
地震動の構造物への荷重効果を的確に捉える為には、既往の応答スペクトル(加速度スペクトル、速度スペクトル、変位スペクトル)に加えて、エネルギースペクトルを用いる事が有効である。
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