15.ストラクチャー書評 
建物と地盤の動的相互作用を考慮した応答解析と耐震設計


日本建築学会 著
丸善株式会社/A4版/379頁/定価 本体3500円+税


本書は1996年4月に「入門・建物と地盤との動的相互作用」として日本建築学会が刊行した全面改訂版である。「地震現象は地中の岩盤に蓄積された歪みエネルギーの開放現象である。」とは今更言うまでも無い事である。しかし最先端の量子力学の行き着く所の理論である「心が現象を作る?・・コペンハーゲン的解釈」に従えば、人類の鬱積したストレス感情の高まりが地殻の歪みエネルギー解放現象の引金に成るとの説がある。暴動、テロ、誘拐、強盗、殺人、と昨今の異常と思える社会現象から生じる人間の高ストレス感情は地震、津波、大雨、地すべり等の自然災害と全く無関係と思われない事態である。災害は又、人間に高ストレスを与える、人間(感情)と自然(地盤)との相互作用は本書のテーマである「建物と地盤の相互作用」からめると人間・建物・地盤の三つ巴の相互作用と言える。本論をそれたが以下は巻頭言を書かれた「東京理科大学 井口道雄 教授」引用して書評に変えたい。
「この度、基礎構造系振動小委員会(全主査:福知伸夫 名古屋大学教授、現主査:宮本裕司 鹿島建設鰹ャ堀研究室部長)の下で「建物と地盤の動的相互作用を考慮した応答解析と耐震設計」が出版されることになったのは、平成12年6月に建築基準法施行令が改められ、新たに制定された限界耐力計算法の中に、地盤と建物との動的相互作用の効果が導入されたことに伴って、構造設計にたずさわる多くの技術者に動的相互作用を正しく理解して戴く必要性が従来に増して強くなって来たのである。この本は、学会の刊行物にありがちな堅苦しさがなく、初学者に分りやすい工夫が随所に見られる。多くの構造技術者、動的相互作用をこれから学ぼうとする大学院生、好学の士に推薦したいと思う。改正された施行令の中に動的相互作用の効果が盛り込まれた事は、構造物の耐震性能評価精度の高度化の意味で喜ばしい。また、斯学の発展過程の中で大きな筋目を迎えたことは意味深い、しかし、この事に一抹の不安がない訳ではない。京都大学名誉教授小堀鐸二先生は、かつて、「構造基準が設定されれば、その設定された部分について深い思考は停止する」旨のことを建築雑誌の誌上で述べていて、この事が頭をよぎるからである。この度の相互作用効果の耐震規定への導入が、この研究分野の思考停止という空虚な停滞を招くことになってはならない。そのためには、この分野に絶えず新鮮なエネルギーが供給され続ける必要がある。本書の刊行が、新たなエネルギーを創出する源泉になることを期待したい。」

真崎雄一




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