建築家のロマンを追及する 
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構造設計図書偽造について考える
 

序 現在世間で問題になっている構造設計図書偽造について建築構造設計者の立場からの考察を試みる。新聞、TVのニュースで連日の如く報道される内容が我々の目指す方向との乖離の大きさに何か割り切れないものを感じるのは「構造計算書」「構造図書」「構造設計」の用語の無理解にあります。しかし、ここにきて「構造設計者」の存在そのものが、始めて世間に知れ渡った事でもあることから、「構造設計業務」そのもの説明が必要であり社会と我々の関係の根本的関係を明らかにし、今後の姿勢を述べたいと考える。

構造は単なる計算作業ではなく創造行為である。

世間は驚くかもしれないが構造設計に基づく構造計算書及び構造図面(以下構造図書と呼ぶ)は携わる構造設計者によって結果はマチマチで一つとして同じものは有りえない。

なぜなら、構造設計はコンピューターに計算条件を入力し結果を構造図書にまとめるのが業ではない。構造設計者は自身の構造業務に対する思想,信条、倫理観、道徳観により構造安全性を検討するなかでコンピューターを道具として使用する。構造は力学的なルールで数学的に割り切れるものではない、その結果、構造設計者により構造安全性に対する技術的なスタンスの違いが多岐にわたる事になる。構造は単なる計算作業ではなく創造行為である。」当然に道具として使用するコンピューターの計算ソフトも異なり、場合によって自身のイメージする力の流れを確認する為には複数のソフトを併用して結果の信頼性を判断する事も多々ある。

一貫構造計算ソフトに対する行政の過度の信頼は構造設計業務に対する無理解にある。

「技術を法で規制する事には限界がある」

建築基準法の技術規定は民主主義社会におけるその時々の社会合意により成りたつ最低のものである。昨今の急激な社会の変動と技術、思想の進歩は学術レベルの成果として建物の安全性を左右する地震力のレベル及び解析手法の変化として表れる。従って、我々の職務は、常に法律以上の性能を満たす必要に迫られる。その為には構造設計者は技術の進歩に遅れないようと業務の傍ら常に勉学、研究に励まなければならない。自らの技術的倫理観を保つべく、理性の正しい判断力の行使を自らの職能と考えるからである。新聞で報道される、「性善説から性悪説でもって規制、監督の強化を目指すべき」等の意見について、ローマの大弁論家キケロの言葉に以下のものがある。「真の法は正しき理性である。命じて人に義務を遂行せしめ禁じて悪行を思い止まらせる。この法の命令や禁止は善人に対して絶えず力を持つが悪人には力が無い。」つまり、法律そのものは性善説を基に成り立っていると言う事である。

法によりマニアル化された技術的知識の強制は技術者個人としての自律性、能力、想像力、独創的判断を奪う憂慮すべき事体となりかねない。技術を法で規制する事には限界がある。

法律は学術の成果を法制化した時点で既に陳腐化する宿命を持つものである。

安易な規制強化は法律の規制以上の性能を建物に付与して、人智では計り知れない自然の大災害に対処する前向きな構造技術の芽を摘むものである。どんなに規制、監督、強化をしても最後は人間の判断力、倫理観で仕事の質は決定される。倫理観、道徳観の欠如はなにも構造にかぎった問題ではなく、この時代に生きる人類全体の大問題である。

今回の問題の根本は「法律が罰しようと罰しまいと、してはいけない事が人間にはある」と言う素朴な倫理観の欠如である。

規制の強化が拙速に法律化されることは時代に逆行するばかりでなく、社会の要求する期待に真摯に答えようと、真面目に努力する大半の構造技術者の仕事に対する意欲をそぐ、真に安易で無責任なことになる。

法の真の目的は制限する事では無く、自由を維持、拡大する事にある。(ジョン・ロック)

「建築構造技術者は構造家をめざすべき

日本に28万人登録されている、一級建築士の中でわずか5パーセント強の1.5万人が建築構造技術者と推定される。その中でも得意、不得意の構造種別があることを考慮にいれると世界でも有数の地震国である、わが国の冠たる耐震技術も真に心もとない現状である。

構造技術者は構造家をめざすべきである。「家」は職業に通じた専門家であり,「家」に恥じない人格、識見、教養を持つと共に常に向上の意欲を持ち続ける必要がある。単に法令,条令の定める基準内での業を行うのではない。特に技術的判断の行使に当たっては己の技術的レベルの限界を客観的に認め、他者から学ぶ謙虚さが求められる。過剰な自信とプライドが結果として、取り返しの付かない事体に陥る危険性を常に自覚する必要がある。

構造家の目標とすべき資質は別図の如くである。一方、社会も構造家の業務、及び存在を認め、その価値を正しく評価しなければならない。社会から存在すら知られない職業にこれからの若い人材が輩出すべきはずは無い。生死にかかわる病に冒された人は、自分の生命を託せる医者を求めて必死に信頼できる名医を求め探し求めます。今後は自分の住む建物も施主は大地震に対してどの構造設計者か生命を託せるかを真剣に確認する必要がある。

「建築構造技術者は高邁な倫理、道徳観をもって仕事に臨むべし」

今後、我国のとるべき道は、客観的理性に基づく構造技術の安全性を確保すべく、真の学術的成果を反映させる道を模索すべきである。その意味で官学民の総意を得た将来的解決を望むものである。同時に我々構造技術者は尊い人命を左右する重要な職能である事に使命感を持つ共に、社会の要望する期待に真摯に答えるべきである。今後は個々の構造技術者の主観的理性を共同体である社会の求める客観的理性と調和させた普遍的理性の基に、技術の研鑽はもとより、高邁な倫理、道徳観の下で、尚、一層の努力を図らなければ成らない。

平成1822日  建築構造士 真崎 雄一




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